ビジネスイノベーション賞選考(2025年6月)
~特定課題研究成果の事業化支援~
第3回ビジネスイノベーション賞選考会は、2025年6月28日(土)に神田キャンパス303(多目的ホール)にて開催されました。この選考会において、ビジネスイノベーション賞が審査され。6件の授賞が決まりました。
(注)ビジネスイノベーション賞
技術経営研究科の最終試験では特定課題研究成果は専任教員によって、学術性/新規性、論理性、自己変革性/教育効果などに重点をおいて評価されています。一方、ビジネスイノベーション賞選考では、特定課題研究成果は本研究科を修了した現役経営者、金融マン等によって、顧客満足、社会貢献、事業性/事業収支/投資回収、実現性などに重点をおいて評価されます。
第3回となる今回は、以下の6名の方がプレゼンされました(当日発表順)。
酒井 由規乃
静岡「袋井茶」を用いて日本人の美意識「わび・さび」をインバウンド客に伝えるwabi-caféのフィジビリティ
高橋 和希
組織開発・ダイアログの重要性の探求~中小企業診断士としての支援方法の考察~
中川 靖章
中小企業の気候変動対応における新規事業
三邉 考志
GPUサーバービジネスにおける付加価値に関する研究~利用支援サービス事業の可能性~
百瀬 直樹
イタリアのものづくりに学ぶ意味的価値創造とミドルウェアとしての中小企業診断士の新たな役割
山根 良宗
土地家屋調査士法人による持続可能な狭隘道路整備のビジネス化
酒井 由規乃
静岡「袋井茶」を用いて日本人の美意識「わび・さび」をインバウンド客に伝えるwabi-caféのフィジビリティ
酒井さまは、「静岡の茶所で生まれ育ち、故郷の「袋井茶」の素晴らしさを広めたい気持ちがあり、何かできないか」といった郷土愛と郷土の名産への思い入れをベースに、わびCafe店舗(小規模日本茶カフェ)の事業化を計画されました。
とくに、訪日観光客の増大を背景に、外国人に「わび・さび」を提供することを事業のコンセプトにされています。地域の名産の認知度の低さや、日本文化の理解度の不十分さという点に問題意識を置き、東京・池袋でカフェを開店する、というビジネスプランです。
高橋 和希
組織開発・ダイアログの重要性の探求~中小企業診断士としての支援方法の考察~
高橋さまは、ご自身の業務経験も踏まえ、1社でも多くの中小企業の経営・組織を支援する、といったビジョンの実現のため、診断型に加えて対話型の組織開発に着目し、中小企業の活性化のためのコンサル手法を提案されました。
とくに、従業者の意識の啓発、エンゲージメントの向上による中小企業の成長に貢献できるコンサルティングビジネスを提案しています。
(高橋様は所用のため欠席され、事前に収録したビデオによる審査)。
中川 靖章
中小企業の気候変動対応における新規事業
中川さまは、中小企業ではなかなか対応が難しいとされる気候変動対策・GX取り組みに焦点を当てられました。中小企業のGX(グリーン・トランスフォーメーション)は2024年版の中小企業白書でも取り上げられた重要な課題です。
中小企業でさえも、気候変動対応が求められる状況で、中小企業のカーボンマネジメント支援を新規事業として実施する提案をされました。中小企業経営者へ中小企業の経営戦略における脱炭素化に関する問題意識の向上、具体的な取り組み計画/方法、効果の計測等に関するコンサルティングを行います。
三邉 考志
GPUサーバービジネスにおける付加価値に関する研究~利用支援サービス事業の可能性~
三邉さまは、「“GPUサーバー有効利用サービス”を主とする自社が, GPU(ハード)とソフトウェア(CAE)にまたがるサービスを行い.異なるが関連するマーケット「モノづくり産業」を見据えたサービスを展開することで創造できる付加価値(≒ビジネスの可能性)の検討」についてプレゼンされました。
CAE作業のトータル時間の短縮化を図るため、ソフトウェアとハードウェアの両方を把握し,GPUの効果を最大化するための技術とサービスを提供することを目的とした事業を目指しています。
百瀬 直樹
イタリアのものづくりに学ぶ意味的価値創造とミドルウェアとしての中小企業診断士の新たな役割
百瀬さまは、イタリアのものづくりのすばらしさに魅了され、価値創造(プロダクトイノベーション)と価値実現(プロセスイノベーション)の両面からアプローチし、それらの成功事例を踏まえつつ、日本の企業にその仕組みを移植する媒介者(百瀬氏の用語でいえば、「ミドルウェア」)としての中小企業診断士のビジネスモデルを提案されました。
具体的には、イタリアにおけるアート思考(新たな問題提起)とアフォーダンス(新たな効用)が上手に融合したデザイン性と機能性の高い商品を、モノづくりに強い日本の地場産業(生活雑貨業界)に適用させる伴走型コンサルティングの事業化を目指しています。
山根 良宗
土地家屋調査士法人による持続可能な狭隘道路整備のビジネス化
山根さまは、昨今頻発する自然災害におけるインフラ上のいわば盲点として「狭隘(きょうあい:非常に狭い、という意味)道路」に着目されました。
土地家屋調査士という資格を背景に、ご専門の見地から物件を取得して狭隘道路の十字路における直角部分の「角切り」を行い土地価値の向上とともに、業務の合理化(DX化)による省人化による業務の高付加価値化を目指したビジネスモデルを提案されました。当面は、東京都北西部、埼玉県南西部あたりを中心にビジネス展開を目指しています。
■ビジネスイノベーション賞の審査
それぞれのプレゼンテーション終了後、修了生の経営者、税理士、金融マンなど、多様なジャンルの審査員により、それぞれの視点から、事業化に関わる課題、課題解決のための方策等に関する質問がされ(ときには激励が行われ)、終始熱のこもった議論が交わされました。それぞれの発表者は、審査員からの課題/解決策の指摘、アドバイス/提案など有益な言論空間の中で、大いに刺激を受けた模様です。
質疑応答、議論等が終了後、審査員によるビジネスイノベーション賞選考のための検討が1時間にわたって実施されました。
■ビジネスイノベーション賞の選考結果
選考委員会による厳選なる審査の結果、以下の結果となりました。なお、本年度はビジネスイノベーション大賞の該当者はありませんでした。
くビジネスイノベーション賞>
◉ビジネスイノベーション大賞 該当者なし
◉ビジネスイノベーション準大賞(金賞) 百瀬直樹さま
◉ビジネスイノベーション優秀賞(銀賞) 中川靖章さま
◉ビジネスイノベーション特別賞(銅賞) 三邊考志さま
◉ビジネスイノベーション奨励賞 酒井由規乃さま、高橋和希さま、山根良宗さま
く信金賞>
◉城南信金賞 百瀬直樹さま
◉西武信金賞 中川靖章さま
ビジネスイノベーション賞の表彰式は、2026年3月の学位記授与式後に、MOT大賞とともに、副賞の贈呈が行われる予定となっています。
日本工業大学 専門職大学院
中小企業イノベーションセンター
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