特定課題研究成果事業化支援事業・評価選考会以降における事業化の取り組み

特定課題研究成果の事業化動向報告(2023.12末日現在)

 本年6月17日(土曜日)に開催されました特定課題研究成果事業化支援事業における評価選考会で4つの特定課題研究成果(提案事業)が受賞されました。

受賞されました4つの提案事業は、事業提案者の事業化に向けた積極的な取り組みで以下のような新たな状況が見られるようになりました。具体的な事業化の進展につきましては、2024.3.16(学位記授与式終了後)に執り行われます表彰式でコメントを頂く予定にしておりますが、大きな動きは以下のとおり挙げられます。

*事業提案者の事業化への取り組みに専念するための独立・起業化

*事業推進のための新会社設立に向けた取り組み

*開発製品の特許取得に向けた手続き完了

*外部企業との事業化に向けた新たな連携

 

選考会 22023.6.17 日工大神田キャンパス303(多目的ホール)
選考会 22023.6.17 日工大神田キャンパス303(多目的ホール)

第一回評価選考会におけるプレゼン概要とコメント

2022年度に作成されました特定課題研究の中から次の4件が選考対象となりました。

 

【ゼネコン協力会の課題と生き残り戦略】 作成者:小山 文男

・ゼネコンの施工を担う企業により構成される協力会及び企業の活性化を目指し、論文作成者である小山様のゼネコン実務経験を活かし協力会向けの事業コンサル業務の事業プランが提案されました。具体的には、中小建設企業の経営改善、経営人材教育、入職者対策、事業承継等の諸活動を支援しながら、ゼネコングループと中小建設業協力会との効果的な連携関係が形成されるコンサルティング事業です。

・選考会メンバーからは小山様がどのような立場(ゼネコン社員として等)で事業化を進めるのか、中小建設業の経営者視点からみた事業化における予想される仮説的な課題と解決方策等に関するコメントを頂きました。

 

【サステイナブルレストランの可能性を引き出す先行指標の事業化】 作成者:宮原 博之

・論文作成者である宮原様はご自身が飲食店を経営するとともに飲食店を対象としたコンサルタント事業を生業としており、我が国における飲食店業の売り上げ低迷に伴う高い廃業率を何とかしたいとのもと本研究に取り組んだ。その結果、飲食店における固定客の育成・定着を如何に図るかが重要な課題であることを踏まえ、かかる課題を解決する固定客の育成・定着が促進される好循環サイクルを明確にすると共に顧客の離反要因要素も明確にするとともに、単に販売促進に頼った再来を促す客数増ではなく店舗にロイヤリティをもった顧客の育成方法を提案されました。具体的には、固定客化が進む好循環サイクルの店舗経営を実現するための施策パッケージと管理ツールとしてLINEアプリの開発、実用化の提案です。

・選考会のメンバーである金融機関からは飲食店の活性化を実現するために様々な施策を講じており、宮原様が実用化を進めている施策及びアプリ運用を金融機関の施策と連携を検討したいなどのコメントがありました。

 

【個人事業者による自社新製品開発の可能性】 作成者:生田 一朗

・排気ダクトの設置工事等を主たる事業としている個人事業主の生田様は、化学工場の排気ダクトの分岐接手(枝管接続)部の製作・設置が経験と勘に頼ることが多く、非効率的な作業を合理化したいとの思いで特定課題研究に着手しています。提案された開発する合理化機械機器は『難しい斜め切削加工が現場で誰でもが簡単に出来る』ところに特徴があり、論文では既にポンチ絵的な図面、概ねの事業収支の試算は完了しており、今後、詳細設計、試作品開発、販売等のステージを展開するとしている。既に、MOT教員の支援のもと、開発機器の特許申請を完了しています。

・モノづくりの経営者が多い選考メンバーからは、詳細設計や試作品開発に必要な資金を自治体などで公募している公的資金制度を活用するなどして、早急にプロトタイプの製作を実現して事業化のための課題を明確にしてはどうか、販路の開拓の検討も並行して行ってはどうか等のコメントがありました。

 

【事業プランとフィジビリティスタディ】 作成者:張 華民

・既にシステム開発を行うIT企業を中国で経営している張様は、特定課題研究では、IT業務におけるテクニカルアドバイザー、在日中国人向けの人材及びビジネスマッチング、AI音声技術による在日中国籍子ども向けの中国語学習サービス等の事業化を提案しています。更に、これらの3つのビジネスを連携させることによるシナジー効果も期待しています。何れの事業も、在日中国人を対象に日本でのビジネス、生活を支援することを目指したものです。

・選考メンバーの経営者からは、社会的ニーズに即して精緻な事業計画が出来上がっているので、どのパーツから事業化を進めるかを検討する必要がある、とくに経営者視点からは、事業化は簡単でなく状況次第で事業計画の変更等を考えざる得ないこともあろうが、この事業モデルをベースに頑張って欲しいなどのコメントがありました。

 

評価選考結果

・評価選考会メンバーによる厳選なる審査の結果、以下の結果となりました。

 

<ビジネス優秀賞(2件)>

宮原博之さん(18期)、張華民さん(18期)

 

<ビジネス賞(2件)>

小山文男さん(17期)、生田一朗さん(18期)

 

 ・また、西武信金賞と城南信金賞としては、金融機関として展開している活性化事業と連携できる可能性の高いものとなっている宮原博之さん(18期)が選ばれました。

・この選考結果の表彰は、2024年3月に執り行われる学位記授与式終了後に、表彰状の授与及び副賞の贈呈が行われる予定となっています。

 

選考結果の発表 22023.6.17 日工大神田キャンパス303(多目的ホール)
選考結果の発表 22023.6.17 日工大神田キャンパス303(多目的ホール)

最後に

・SMEICでは第一回目の特定課題研究成果事業化支援のための評価選考会を開催しました。選考メンバーの多くは特定課題研究を経験した経営者であり、経営者感覚でビジネス的視点から選考が行われました。

・今後は、事業化支援に対して審査メンバーがどのように関わることが望ましいか等検討するべき点は多くありますが、評価選考会の回を重ねることによって現実的な支援が見えてくることを期待したいと思います。